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加齢黄斑変性の治療方法開発

加齢黄斑変性(AMD)とは

iPSC再生医薬品開発の第一歩として眼科領域に取り組むiPSC再生医薬品開発の第一歩として眼科領域に取り組む

人の目の内側は、網膜という、光を感じ脳に電気信号(視覚情報)として伝えることが出来る神経細胞でできた膜(カメラで言うところのフィルムに相当)で覆われており、その網膜の中心に位置する直径1.5~2mm程の部位を黄斑(おうはん)といいます。黄斑は網膜で目のレンズを通ってきた光がもっとも集まる部位で、視力を得るために重要な働きをしています。そのため、この黄斑の機能が阻害されると、網膜のほかの部分が正常であっても、十分な視力を得ることができません。加齢により黄斑に障害が生じ、見ようとするところが見えにくくなる目の病気のことを加齢黄斑変性(AMD:age-related macular degeneration)と呼びます。加齢黄斑変性は、欧米では成人の失明原因の第1位、日本では第4位の病気です。

日本では最近まで比較的少ないとされていましたが、高齢化と生活の欧米化によりその患者数は近年著しく増加しています。現在では、50歳以上の人の約1%にみられると言われ、高齢になるほど多くみられます。(1998年、2007年、久山町研究)

加齢黄斑変性には滲出型(ウエット型)と萎縮型(ドライ型)の2つの種類があり、症状は同様であるものの発症のメカニズムが異なっています。黄斑のある網膜の下部には、網膜色素上皮細胞(Retinal Pigment Epithelium : RPE細胞)という一層の細胞があり、その下に脈絡膜という血管に富んだ組織があります。網膜が正しく働き、正常な視力を得るためには、網膜の下にあるRPE細胞やその下にある脈絡膜が正しく働く必要があります。

滲出型(ウエット型)の加齢黄斑変性は、RPE細胞が老化に伴う様々な原因で障害されることにより脈絡膜から異常な新生血管がRPE細胞の下またはRPE細胞と視細胞の間につくられ、そこからの出血や血液成分の漏出などにより、視細胞の機能が障害を受ける疾患です。
一方の萎縮型(ドライ型)の加齢黄斑変性は、老化による炎症がRPE細胞に起こり、RPE細胞と共に、その上部にある視細胞が失われることで、視力の障害が生じる疾患です

AMD(加齢黄斑変性)の治療方法加齢黄斑変性(AMD)の症状断面図

加齢黄斑変性(AMD)の治療法の開発

現在、滲出型(ウエット型)の加齢黄斑変性の治療法としていくつかの治療法が存在していますが、いずれも、異常発生した新生血管の拡大を抑え退縮させる治療であることから、視力の維持や改善ができても、根本的な原因の解決にはつながりませんでした。また、萎縮型(ドライ型)の加齢黄斑変性については有効な治療法はないのが現状です。

私たちは加齢黄斑変性について、iPS細胞から分化誘導して作成したRPE細胞を含んだ懸濁液あるいはRPE細胞シートにより、より根本的な治療法の開発を進めております。

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iPS細胞由来色素上皮細胞製品の作製

滲出型(ウエット型)の加齢黄斑変性においては、iPS細胞から分化させたRPE細胞を含んだ懸濁液を注入し生着させることで、視細胞を安定させ機能復元を図る治療法の開発を主に行っています。

AMD(加齢黄斑変性)の治療法と治療箇所iPS細胞から分化誘導し作製したRPE細胞の移植手術

RPE細胞をさらに膜状にしたRPEシートを移植する方法についても開発を検討しております。

萎縮型(ドライ型)の加齢黄斑変性については、炎症による欠損箇所にRPE細胞を含んだ懸濁液を注入する方法の開発を進めています。

ヘリオスでは、より患者さんに最適な治療法を提供できるように、「RPE細胞懸濁液」と「RPE細胞シート」の2つの製品の承認取得・上市を目指して開発を進めています。

実現に向けて

再生医薬品の実現する土壌は出来上がり始めている再生医薬品の実現する土壌は出来上がり始めている

2014年9月、世界初の加齢黄斑変性に対するiPS細胞由来のRPEシート移植手術が実施されました。
これは、国立研究開発法人理化学研究所と公益財団法人先端医療振興財団が共同で行っている「滲出型加齢黄斑変性に対する自家iPS細胞由来網膜色素上皮シート移植に関する臨床研究」(2013年7月に厚生労働省より計画承認)による第1例目の手術であり、地方独立行政法人神戸市民病院機構の協力の下行われました。

今後の経過がさらに重要ではありますが、iPSC再生医薬品の実用化に向けて大いに追い風となっていると考えています。

そして日本国内では薬事法の改正による「薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)」の誕生に伴い、再生医療分野における迅速な承認を実現する環境の整備が始まっています。

私たちヘリオスは、この研究成果を再生医療等製品として実用化すべく、安定した製造体制や、安全で効果のある治療法の確立など様々な課題をクリアしながら、iPSC再生医薬品の実現に向けて一歩一歩進んでまいります。

(参考データ)
加齢黄斑変性(AMD)の治療の現状

上記のとおり、今後の高齢化進展にともない、世界中で加齢黄斑変性の患者数が増加していくと考えられています。当社は、新しい加齢黄斑変性の治療法を開発することで、一人でも多くの患者様のQOLの向上を目指します。

なお、加齢黄斑変性の患者様の数、また現在ある治療法による医療費は、以下のように推定されています。

加齢黄斑変性(AMD)の治療の現状

(出所)

  • ・有病率は米国国立眼科研究所、難病情報センター、AMDFのホームページより当社作成
    ・医療費推計は製薬会社各社(ロシュ、バイエル、ノバルティス、リジェネロン、参天製薬)の公表資料による
    ルセンティス及びアイリーア(WetAMD以外の適応拡大対象疾患分の販売額を含む)の販売額より当社作成
    ・為替レートは110円/ドル、1.12ドル/スイスフランで換算