医薬品の変革

低分子化合物から抗体医薬品、そして再生医療へ

医薬品開発においては、大きなパラダイムシフトが起こっています。
従来は化学物質の合成により作られる「低分子化合物」が主流でしたが、人間の体の中で作り出されている生体物質を利用したバイオ医薬品の市場が急拡大しています。バイオ医薬品の代表例としては、免疫機能を担っている抗体という生体内物質(タンパク質)を医薬品として活用した「抗体医薬品」があげられます。さらに現在、バイオ医薬品を用いた治療の中でも、細胞そのものを用いた「細胞治療」や組織や臓器の再生を目指す「再生医療」といった新たな治療法の臨床試験が開始され、実用化に向けて一歩ずつ進んでいます。

再生医療とは

飛躍的な発展が予想される再生医療

再生医療とは、幹細胞等を用いて、臓器や組織の欠損や機能障害・不全に対し、それらの臓器や組織を再生し、失われた人体機能の回復を目指す医療です。既存の医薬品では治療が難しいものや、治療法が確立されていない疾患に対して新たな治療法となる可能性があります。
特にiPS細胞は、さまざまな器官・細胞へと分化できる多能性と、ほぼ無限に増殖する能力(増殖能)を持ち、再生医療の可能性を飛躍的に拡大させることが期待されています。
近年、大きく平均寿命は延びましたが、細胞の老化が原因となって引き起こされる慢性疾患も増えてきており、残念なことに根治できる治療法が存在しないことがあるのも事実です。今現在も、世界中で多くの患者さんが慢性疾患やその他の治療の難しい病に苦しんでいます。
iPS細胞等を活用した再生医薬品の開発・製造が進めば、人体の臓器や組織における細胞の老化が原因の疾患について、将来的に、より根本的な原因に直接作用できる治療や、高齢社会においてQOLの向上に貢献できることが期待されています。

薬事法改正による再生医療実現への環境整備

日本国内では2014年、薬事法の改正が行われ薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)が制定されました。ヒトの細胞に培養等の加工を施した再生医療等製品においては、その有効性が推定され、安全性が確認された場合には、当局の判断によって条件及び期限を付して早期に承認されるという、世界に先駆けて迅速な承認を実現する新たな制度が整備されています。