加齢黄斑変性とは

眼はカメラと同じように、レンズにあたる角膜・水晶体を持ち、その内側はイメージセンサー(いわゆるフィルム)にあたる網膜で覆われています。網膜は、眼に入ってきた光を感じて脳に電気信号(視覚情報)として伝える神経細胞でできており、その中心にある直径1.5〜2mm程の部位を黄斑(おうはん)といいます。黄斑はレンズを通ってきた光がもっとも集まる部位で、視力を得るために重要な働きをしています。そのため、この黄斑の機能が損なわれると、網膜のほかの部分が正常であっても、十分な視力を得ることができません。

この黄斑に、加齢に伴う様々な原因によって障害が生じ、物が歪んで見える、視力が下がる等の症状が表れる疾患を加齢黄斑変性(AMD:age-related macular degeneration)と呼んでいます。

原因と症状

加齢黄斑変性には、滲出型(ウエット型)加齢黄斑変性と萎縮型(ドライ型)加齢黄斑変性の2種類があり、どちらも症状は同じですが、発症のメカニズムが異なります。
黄斑のある網膜の下部には、網膜色素上皮細胞(RPE細胞:Retinal Pigment Epithelium)があります。そのさらに下には脈絡膜という血管に富んだ組織が存在しており、正常な視力を得るためには、網膜の下にあるRPE細胞やその下の脈絡膜が正しく機能しなくてはなりません。
滲出型(ウエット型)加齢黄斑変性は、加齢によりRPE細胞の機能が低下したり、損傷を受けたりすることで脈絡膜から異常な新生血管(新しく形成されたもろい血管)がつくられ、そこからの出血や血液成分の漏出などにより、視細胞の機能が障害を受けてしまう疾患です。一方、老化によりRPE細胞に炎症が起こり、RPE細胞と共にその上部にある視細胞が失われることで、視力に障害が生じてしまう疾患が萎縮型(ドライ型)加齢黄斑変性です。

原因
症状

加齢黄斑変性の罹患者数

加齢黄斑変性は、日本人の失明原因の第4位、欧米の成人の失明原因第1位の疾患です。日本では比較的少ないとされていましたが、現在では、50歳以上の人の約1%にみられると考えられ、高齢化や生活の欧米化、喫煙などにより患者数は著しく増加傾向にあると言われています。

  • ※参考:1998年、2007年 久山町研究

現在の治療法

滲出型加齢黄斑変性に対しては、抗VEGF薬の投与や光線力学的療法(PDT)により、新生血管の発生を抑える治療法が行われています。いずれも視力の維持や改善はできても根本的な疾患の解決にはつながっていません。抗VEGF薬を投与しても1年以内に再発する罹患者層は、滲出型加齢黄斑変性罹患者の約92%を占めています。
また萎縮型加齢黄斑変性については有効な治療法はまだありません。

  • ※(出典)2014年3月19日(木)12:00〜12:50 第13回 日本再生医療学会「iPS細胞の臨床応用に向けてのアプローチ」理化学研究所 万代道子

ヘリオスが目指す治療法「iPS細胞由来RPE細胞」

滲出型/萎縮型加齢黄斑変性のいずれもRPE細胞の機能低下に起因すると考えられることから、ヘリオスではiPS細胞から作製した新たなRPE細胞を患部に移植するという新しい治療法の開発に取り組んでいます。

iPS細胞から分化させたRPE細胞を含んだ懸濁液(一つ一つばらばらにした細胞を含んだ液体)を注入し生着させる手法、あるいはシート状のiPS細胞由来RPE細胞の移植により、視力を維持するために継続治療が必要とされてきた既存治療法に比べ、一度の移植での治療が可能になることが期待されています。

開発・製造体制

ヘリオスは理化学研究所との間でiPS細胞を含む多能性幹細胞由来RPE細胞を有効成分として含有する再生医療製品を対象とする全世界を許諾領域とした特許実施許諾契約を締結して独占的ライセンスを受けております。
また国内におけるiPS細胞由来RPE細胞による加齢黄斑変性治療法開発に関して、大日本住友製薬株式会社と共同開発契約を締結しています。大日本住友製薬から提供される開発資金をもとに、開発を共同で行い、ヘリオスが製造販売承認の取得及び販売を行う予定です。さらに共同開発によって製品化されるRPE細胞医薬品の製造や販売促進を共同して行うため、大日本住友製薬と合弁会社である株式会社サイレジェンを設立しています。